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眼のトラブル対策の鍵を握るのは血流?


眼のトラブル対策の鍵を握るのは血流?

夕方になると、肩こりとともに目の疲れもひどくなることはよくありますよね。


スマートフォンをはじめ、私たちの生活では液晶画面を見る時間が長くなっています。しかし、目を酷使することによって、目の不調だけでなく全身の不調につながることもあります。


デジタル社会だからこそ、目の血流を良くしていくことが重要です。


目次


視力と血流について
視力と血流について

2014年に日本眼科学会が発表した結果によると、日本における中途失明の原因の第1位は緑内障(21.0%)、第2位は糖尿病性網膜症(15.6%)、第3位は網膜色素変性(12.0%)です1)


これらの病気は、眼の中の血流異常(眼底循環異常)が主な原因で、眼の中の網膜や視神経に栄養が十分に行き渡らず、視力に悪影響を与えます。緑内障の場合、眼圧が上昇して視神経がダメージを受けることによって、見える範囲が狭くなります。


しかし、眼圧が正常でも、視神経の血流が滞ることで緑内障の症状が発症することがあります。眼の中の血流量は1分間に2.0ミリリットルと言われています2)。人間の体内には、例えば、体重60㎏の人の場合、体重の約1/13に相当するおよそ5リットルの血液が含まれています。全身の血流量を見ると、眼の中の血流量は非常に少ないことがわかります。そのため、細かな調整が必要です。


また、他の組織と比較して、眼の中の血流は神経の調整が少なく、血管自体が柔軟に血流を調整しています。眼の健康を維持するためには、血管の循環状態をよく保つことが重要です。


 

眼精疲労と血流

眼精疲労と血流

疲れ目などの目の不調である「眼精疲労」も血流が原因の一つと考えられます。


例えば、スマートフォンなどの小さな画面を見ていると、ピント調整の役割を担う毛様体筋が収縮し、水晶体が膨らんで近くにピントを合わせます。

しかし、長時間画面を見続けると、毛様体筋が緊張したままになり、筋肉疲労を起こすことがあります。


また、毛様体筋を調整している自律神経のバランスが崩れると、頭痛や肩こりなどの不調が生じることがあります。さらに重症化すると、うつ病などの精神症状が現れることもあります。このため、眼の疲れから全身に不調が出ている場合は、治療が必要です。


老化によっても、水晶体が硬くなり、ピント調整機能が衰えるため、近くが見えにくくなることがあります。これが老眼ですが、無理をして近くを見続けると、眼が疲れやすくなることにも注意が必要です。


 

眼の血流を良い状態にするために必要なこと

眼の血流を良い状態にするために必要なこと

現代では、スマートフォンやパソコンなどの電子機器が欠かせないものになっています。

これらは、便利な世界を作ってくれますが、同時に眼の健康を考えなければなりません。そこで、私たちが実践すべき眼の健康法を紹介します。


①長時間の作業中は、定期的に意識して定期的に眼を休ませましょう。

1時間に1回、10分を目安に画面から眼を離し、目をつむったり、遠くのものを見たりしましょう。


②眼の体操やマッサージなどを行いましょう。

眼の周りの血流を良くするために、眼のマッサージや軽いストレッチをすることが重要です。


③疲れが溜まってきたら、眼を温める。

マッサージと一緒に、温かいタオルでじんわりと温めましょう。血流が良くなり、筋肉が緩むので効果的です。


④運動をしましょう。

有酸素運動(例えば、ランニング)を行うことで、全身の血流を良くしましょう。また、ストレスは自律神経のバランスを崩すため、自分なりのリラックス方法を見つけることも重要です。



眼の健康に必要な栄養素

眼の健康に必要な栄養素

眼の健康には、以下の栄養素が重要です。


①ビタミンA

ビタミンAは、網膜に多く存在し、光を感じるために必要不可欠です。また、目を乾燥から守る役割も持っています。レバーや緑黄色野菜、海藻に含まれています。野菜や海藻に含まれるビタミンAは、油脂と一緒に調理することで吸収が良くなります。炒め物などにして油と一緒に摂るようにしましょう。


②ルテイン

ルテインは、黄色または赤色の色素で、抗酸化作用があります。目に入ってきた光刺激から網膜を守る役割があります。ケールや小松菜、アボカドなどに多く含まれています。


③オメガ3脂肪酸

青魚に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)は、抗炎症作用があり、眼の健康にも寄与することが報告されています3)。オメガ3脂肪酸は、ヒトの体内では作ることができない必須脂肪酸のため、食事から摂る必要があります。しかし、揚げ調理はDHA&EPAの損失が多いため、刺身などの生食やグリル焼き、フライパン焼きがおすすめです4)


 


まとめ


散歩


スマートフォンやタブレットなどの普及により、目の健康を保つことがますます重要になっています。


スマートフォンを使用する際は適度に休憩をとり、目の血流を促進することが重要です。

また、目を保護するための栄養素がいくつかあります。


これらを食事やサプリメントから摂取して、いつまでも鮮明な視力を保ちましょう。



引用)

1) 若生里奈ら.日本における視覚障害の原因と現状.日本眼科学会雑誌 118: 495-501,2014.

2) 林直亨、長岡泰司.眼底循環に加齢や生活習慣が与える影響.体力科学69:14-18,2020.

3) R Bhargava et al, Omega-3 fatty acids supplements for dry eye - Are they effective or ineffective? Indian J Ophthalmol ;71(4):1619-1625,2023

4) 日本脂質栄養学会ホームページより(http://jsln.umin.jp/committee/omega2.html)

原文:Cheung LKY et al, Mechanisms of Docosahexaenoic and Eicosapentaenoic Acid Loss from Pacific Saury and Comparison of Their Retention Rates after Various Cooking Methods. J Food Sci., 81:C1899-907, 2016.


 

監修者:森下竜一

昭和62年大阪大学医学部卒業。米国スタンフォード大学循環器科研究員・客員講師、大阪大学助教授を経て、平成15年より大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学寄付講座教授(現職)。内閣府 健康・医療戦略室戦略参与、日本遺伝子細胞治療学会理事長、日本脳血管認知症学会理事長、日本抗加齢医学会副理事長、2025年日本国際博覧会大阪パビリオン推進委員会総合プロデューサーなどを務める。新著に『新型コロナワクチンを打つ前に読む本』など。



ライター:鍼灸師 黒井俊哉

大学院にて慢性頭痛の研究を学んだあと、一般企業に就職し、通所介護事業の新規立ち上げに従事。その後、「認知症の超早期発見と重症化予防プロジェクト」に従事し、認知機能の低下の早期発見について研究を行う。その成果を論文として執筆し、令和2年度日本早期認知症学会論文賞受賞。現在は、高齢者を中心に、介護予防に関する講演活動を実施している。


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