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【専門家が解説】その体調不良、原因は血流?(後編)



前回のコラムでは、「血流とは何か?」、「血流が悪くなるとは?」について解説をしました。血流とは、「血管」の中の「血液」の流れのことを言いますが、血流が悪くなると、おおよそ37兆個の細胞に酸素や栄養素を十分に届けることが出来なくなります。

そのことによって、からだに様々な不調をきたしてしまいます。


今回はなぜ血流が悪くなるのか、そして今から実践できる血流を悪くしない習慣について解説していきます。



Lemon spinach risotto on a round plate.


なぜ血流が悪くなるのか?

では、なぜ血流が悪くなるのでしょうか?


血流が悪くなる要因は、

①運動不足

②乱れた食生活

③ストレス

の3つが主な要因です。それぞれ具体的にみていきましょう。


①運動不足


例えば、ウォーキング等の有酸素運動は、筋肉を動かすためのエネルギーを、外から取り入れた酸素を使って生み出します。その酸素を筋肉の細胞に届けるためには、自然と血液の流れを良くすることが必要になります。そのため、日頃から運動する習慣(筋肉を動かす習慣)がないと、血液の流れが悪くなってしまいます。

また、筋肉を動かすことは、筋肉へのポンプ作用が働き、血流が促進されます。特に、下半身の血流に関しては、ふくらはぎの筋ポンプ作用がとても重要で、筋肉が少ないと心臓へ戻す力が弱くなり、血流が悪くなります。


さらに、近年の研究から、筋肉を動かすことによって、健康の維持・疾病予防・抗老化のホルモン(マイオカイン)が筋肉から血管に流れ出てくることがわかってきていますので、運動(筋肉を動かすこと)を行うことは、血流を考える上でとても重要です。

それでは、ここで、血液の働きをみてみましょう。



②乱れた食生活


乱れた食生活も血流を悪くする原因になります。

例えば、脂質の多い食生活をしていると、血液の粘度が高くなり、血流が悪くなります。血液の粘度とは、血液の流れやすさを示す指標と言われています。血液のおよそ40〜45%は細胞成分で、残りは液体成分(水分)です。血液の粘度は、赤血球の量や変形のしやすさの他に、血漿(けっしょう)と呼ばれる液体成分も関わってきます。


日頃から脂っこい食事をしていると、血液中のコレステロールの濃度があがり、血液の粘度が高くなり、結果的に血流が悪くなります。また、食べ過ぎや運動不足等で身体に溜まってしまった内臓脂肪から、血管の壁を傷つける物質が血液中に出てくることがわかってきており、血管が硬くなる、いわゆる”動脈硬化”を引き起こします。



③ストレス


私たちの自律神経は、交感神経と副交感神経がバランスよく働くことで生命活動を維持しています。からだの各部位の血流調整も自律神経が行っているため、例えば体温調整にも変化が生じます。運動を行うと体温があがりますが、その熱を外へ逃がすために皮膚の交感神経は、その働きを弱め皮膚の血管を広げることで体温調整をしています。一方、運動不足の状態では交感神経の働きは弱まることがなく、血管は過度に収縮したままの状態で血流も悪くなります。その結果、冷えを感じるのです。



血流を悪くしない習慣

最後に、今日からできる血流を悪くしない3つの習慣を紹介します。


①適度な運動


ウォーキング等の有酸素運動。有酸素運動を行うことで、体内に多くの酸素を取り込めるため、全身の血流が良くなります。ウォーキングなら週5ペースで30分〜1時間程度歩くことをオススメします。


また、ストレッチもとても重要。筋肉を伸ばすことで、筋温や体温を高める効果が狙えます。また、ストレッチの際に、呼吸を意識的に深く・ゆっくりすることにより、副交感神経の活動が高まることがわかっていますので、リラクゼーション目的としても効果があります。


②バランスのとれた食事(水分摂取も含む)


糖質や脂質を多く含んだ食事を続けることは、血液の粘度が高くなり、血流が悪くなることにつながりますので、ほどほどに。


また、血流を良くする食材として、以下があげられます。


タマネギ:血栓を溶かす役割や、血管を広げる役割

レバーやヒジキ:鉄分=酸素を運搬する役割

魚油:血管をしなやかにする役割


また、こまめな水分補給もとても重要です。

運動時以外でも水分は体内から失われますので、血液中の水分も減って、血流が悪くなります。意識的に水分を補給しましょう。



③ゆとりある精神(ストレスを溜め込まない)


自分なりのストレス解消方法を持ち、ストレスを溜め込まないにしましょう。また、スマートフォンやSNSの普及によって、絶え間なく情報を入手できり、ゲームも気軽にできる状況では、本来リラックスすべき時間も、集中力を使っていることが多くなっている環境にあります。


さらに、コロナ禍におけるテレワークの普及により、仕事とプライベートの境界が曖昧になり、無意識に緊張の連続が続いている方も多いのではないでしょうか。

スマートフォンやパソコンから距離を置くなど、積極的な休養をとることもとても重要です。



 

監修者:医師 野口なつ美

日本医師会認定産業医、日本抗加齢学会評議員、美容皮膚科学会会員。戦争を無くすために外交官になろうと慶應義塾大学総合政策学部に入学。争いを生んでしまう心に関心を持ち、卒業後は東京医科歯科大学医学部へ。東京医科歯科大学にて研修、皮膚科勤務を経て、都内保健所勤務、美容皮膚科、栄養療法、産業医経験も含め、幅広く予防医学、美容医療に携わり、根本的な心身の健康と健全な美を追及している。



ライター:鍼灸師 黒井俊哉

大学院にて慢性頭痛の研究を学んだあと、一般企業に就職し、通所介護事業の新規立ち上げに従事。その後、「認知症の超早期発見と重症化予防プロジェクト」に従事し、認知機能の低下の早期発見について研究を行う。その成果を論文として執筆し、令和2年度日本早期認知症学会論文賞受賞。現在は、高齢者を中心に、介護予防に関する講演活動を実施している。


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