2023年冬は全国的に平年より気温が高い日が続きました。
気象庁の発表によると、2024年1月〜3月も暖冬傾向との予想。
しかし、朝の気温が低く、1日の寒暖差が激しい傾向です。
激しい寒暖差は自律神経の乱れや血流の悪化を招き、結果として免疫力が低下しやすくなり、風邪などにかかりやすくなります。
健康的な冬を過ごすために、免疫力向上のための血流改善の秘訣をご紹介します。
目次
・免疫とは何か?
・なぜ、冬に免疫が低下しやすいのか?
・自律神経と免疫の関係
・免疫を高めるために重要なこと
・まとめ
免疫とは何か?
まずは、免疫について簡単に解説します。
私たちの身体には、細菌やウイルスなどの病原体からカラダを守る免疫というシステムを持っています。
免疫は大きく分けて、「自然免疫」と「獲得免疫」の2つの種類があります。
自然免疫とは体内に入ってきた病原体に反応して病原体を退治するシステムです。第一陣である自然免疫は、何らかの原因によって皮膚や粘膜から侵入してきた病原体を”マクロファージ”や”樹状細胞”という白血球の種類が病原体を食べて、身体を守ります。しかし、食べきれず、さらに病原体が侵入すると、第二陣である獲得免疫の出番です。
別の樹状細胞が”T細胞”や”B細胞”などの別の白血球の仲間を呼び寄せて、病原体が増えている細胞を攻撃したり、その病原体にどのような特徴があったかを記憶して、抗体を作り、2回目以降に同じ病原体が入ったときに撃退します。
インフルエンザワクチンは後者の獲得免疫の仕組みを利用し、ワクチンを接種することでインフルエンザウイルスに対する抗体を作って、インフルエンザウイルスに感染したときの発症リスクを軽減したり、重症化を軽減するというものです。
なぜ、冬に免疫が低下しやすいのか?
では、なぜ冬に風邪を引きやすくなるのでしょうか。
インフルエンザを例に見てみます。
①空気の乾燥:
インフルエンザウイルスは口や鼻、目などの粘膜から侵入し、ヒトに感染します。空気が乾燥すると、鼻や喉の粘膜が乾燥し、自然免疫であるバリア機能が低下します。従って、ウイルスにとって冬はヒトに侵入しやすい季節ともいえます。
②体温の低下:
気温の低下により、体が冷えて体温が下がりやすくなります。体温が低くなると、カラダの中に熱を溜め込もうとして皮膚の血管が収縮します。そのことにより血流が悪くなります。私たちの免疫を支える白血球は血液の中に存在し、私たちの体の中のパトロールをしています。血流が悪くなるということは、カラダの中に病原体が侵入した際の防御反応が遅れてしまいます。
③日照時間の低下:
ビタミンDは骨の健康だけでなく、免疫機能の調整にも寄与していることが明らかになっています。ビタミンDは鮭やしいたけなどの食品からの摂取も重要ですが、紫外線を浴びることによっても体の中でビタミンDが生成されます。しかし、冬は日照時間が少なくなり、また寒さにより室内で過ごすことも多くなります。そうしたことにより、ビタミンDが不足し、免疫の力が弱くなります。
自律神経と免疫の関係
2023年〜2024年冬は暖冬傾向ですので、朝晩の気温差が例年以上に大きくなります。
また、真冬並みの気温を記録したかと思えば、その翌日は春一歩手前の気温になるという気温の乱高下も今シーズンの特徴です。こういった気温差が激しいことはからだにとってはとてもストレスとなります。
ストレスは自律神経のバランスを崩します。免疫と自律神経は密接なつながりがあります。免疫システムを主に担うのは白血球です。白血球は好中球や好酸球、好塩基球などの「顆粒球」、T細胞やB細胞、NK細胞といった「リンパ球」、「マクロファージ」や「樹状細胞」などに分類され、機能や役割、形態などがそれぞれ異なります。自律神経のうち交感神経の働きが強いときには「顆粒球」が活性化して増殖し、リンパ球が減少します。
これは、交感神経の活動が高まる昼間の時間帯では、活動によりケガをしやすくなり、細菌や寄生虫などの病原体が侵入しやすくなるため、顆粒球が活性化されるのではと考えられています。
一方、副交感神経の働きが強いときにはリンパ球が活性化します。副交感神経の活動が高まるのはリラックスした時や睡眠中ですが、これらはリンパ球を活性化することによりウィルスの侵入に備えているのではないかと考えられています。ここで大切なのは、どちらか一方を活性化するのではなく、一定のバランスを保つことで、免疫が高い状態といえます。
従って、免疫を鍛えるためには自律神経のバランスを整えることも重要です。
免疫を高めるために重要なこと
これまでご紹介してきたように、冬は免疫の力が落ちやすい季節です。免疫の力を落とさずに、この冬を乗り切る方法をご紹介します。ポイントは血流です。
①適度な運動:
激しい運動は免疫の力を落としてしまうと言われています。3メッツ以上の生活活動において、体を動かすことがおすすめです。適度な運動は血流を良くすることで、免疫の力を高めます。生活活動のメッツ一覧はこちら。
②腸の環境を整えること:
からだ全体の免疫細胞の70%が腸に集まっていると言われており、腸を整えることは全身の免疫の力を高めることになります。冬を越したら花粉症の季節が到来。今のうちから腸の環境を整えておきましょう。腸の環境が整うことで、自律神経のバランスも整います。詳細はこちら。
まとめ
2024年最初の血流コラムは免疫についてご紹介しました。
免疫の力を高めるためには、今日ご紹介してきたように自律神経や血流を意識して整えておくことが重要です。加えて、病原体を体の中に入れないように、食事前や帰宅時等の手洗いやうがいなどの感染対策も忘れずにしましょう。
監修者:森下竜一
昭和62年大阪大学医学部卒業。米国スタンフォード大学循環器科研究員・客員講師、大阪大学助教授を経て、平成15年より大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学寄付講座教授(現職)。内閣府 健康・医療戦略室戦略参与、日本遺伝子細胞治療学会理事長、日本脳血管認知症学会理事長、日本抗加齢医学会副理事長、2025年日本国際博覧会大阪パビリオン推進委員会総合プロデューサーなどを務める。新著に『新型コロナワクチンを打つ前に読む本』など。
ライター:鍼灸師 黒井俊哉
大学院にて慢性頭痛の研究を学んだあと、一般企業に就職し、通所介護事業の新規立ち上げに従事。その後、「認知症の超早期発見と重症化予防プロジェクト」に従事し、認知機能の低下の早期発見について研究を行う。その成果を論文として執筆し、令和2年度日本早期認知症学会論文賞受賞。現在は、高齢者を中心に、介護予防に関する講演活動を実施している。
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